人様のコンテンツの話

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2020シーズンが終わった日。

8月の猛烈な暑さが突如和らいだ9月1日。その気温の低下に呼応するかのように、私の今年の野球熱も静かに引いていった。
私の中で、今年のベイスターズの優勝はなくなった。
首位巨人とは5.5ゲーム差で迎えた首位攻防。3タテ出来れば差は2.5まで縮まり、まだまだどうなるかわからない状況だ。そうとは行かなくても、カード勝ち越しが出来れば、まだ諦めることにはならなかっただろう。
しかし、私はカード初戦でこのシーズンの終わりを感じ取った。

相手は今年絶対的エースとして君臨する菅野。
対する上茶谷はまだまだ不安定さが残り、始まる前から厳しい戦いだとはっきりわかっていた。
3回まで両チーム無得点で試合は進む。
さすがに簡単に菅野を打ち崩すことは出来ないが、上茶谷も良い投球を見せていた。
4回裏、失投を捉えられ2点を先制されるが、5回表にすぐさま1点を返す。
緊迫した投手戦のままさらに進んだ試合はついに勝負の8回表を迎えた。

さしもの菅野も100球を超え疲れが出たのか、2アウトから2連続四球。
ランナー1,2塁として佐野に回った。菅野は134球で降板。なんとか次の投手をマウンドに引きずり出すことが出来た。

ここが勝負所だと強く感じた。

菅野を打ち崩すことは出来なくても、なんとか食らいついて降板させられれば。
連勝の記録を止め、さらには敗戦させることが出来れば、それはチームにとってとても大きなプラスの材料になるだろう。今後のシーズン、勢いを持って戦うことが出来る。
一方で、今やチームの顔となった佐野がこの場面で凡退してしまえば、ネガティブなムードがファンやチームを支配することになってしまうだろう。
3連戦の試合内容より何より、この1打席にシーズンの行方すべてが左右されると私は感じていた。

そしてその考えをまとめる間もなく、投手交代の初球を佐野はライト前に運ぶ。
私が考えていた「凡退」でも「逆転」でもなく、「同点」という結果が出た。
改めて私は考え直す。

「まだシーズンの行方はわからない」

8回裏の攻撃をしのぎ、9回表は凡退にあえなく終わり、このまま勝てはしなくても延長に持ち込んで引き分けに出来ればと楽観視していた。

しかし9回裏、エスコバーがコールされ、突如不安が胸をよぎった。
昨年、同じようにシーズン終盤の首位決戦、石川慎吾に打たれたあの一打は未だに忘れることはない。ゲーム差6で迎え、敗戦すればマジック点灯というとても重要な試合だった。

そして今年も、1アウトも取れずにサヨナラ負けを喫してしまった。
この後味の悪い敗戦に、先程頭に浮かんだ「行方はわからない」という言葉はすっかり消え、巨人との順位・ゲーム差以上の差を見せつけられた試合に心が冷えていった。
「去年の繰り返し」それでは勝てるはずもない。優勝も出来ない。悲観的過ぎる気もするが、外れてもいないだろうと思っている。
私の中で2020シーズン、優勝争いはこの日幕を閉じた。

ここからは9回の采配についての話をしたい。
あの場面、エスコバーの投入は決して間違いではない。
何ならセオリー通りである。
三嶋、山崎、平田、武藤、国吉、エスコバーというベンチ投手陣。
ビジターチームは一番いい投手を一番最後に持ってくるのが定石なので、三嶋は10回。
次にいい投手は9回、だからエスコバーは当然の選択だ。
左の丸から始まることを考えても、左対左で効果的と考えることも出来る。
個人的にもエスコバーは信頼しているし、繰り返しになるが決して間違ってはいない。何も責められる部分はない。

しかしどうしても、結果論からではあるが、「9回に三嶋」でも良かったのではないかと思ってしまう。
これは仮定の話なので、結局「9回に三嶋出して抑えて、じゃあ10回は誰が行くんだ?」という新たな疑問が生まれるし、その先で「誰なら抑えられた」なんてことは好き勝手言えてしまうので議論にすらならない机上の空論である。

それを前提としても、何故エスコバーが不安だったのかという話をする。
まず先頭の丸に対してエスコバーは今年3打数2安打1本塁打、通算23打数11安打.478とはっきり相性が悪い。
データを重視するなら気にかけるべき数字だった。
丸が塁に出てしまえば「代走増田」があるからだ。
増田はヒット一本で帰ってきてしまう能力がある。そこへのケアが不十分だったように思う。
その後満塁策も行ったが、四球もワイルドピッチも許されない窮屈な状況で、エスコバー本来のピッチングが引き出されるはずはなかった。
リード時ならともかく、同点でサヨナラがある場面で投げるにはどうしても不安が残る。
だから彼はクローザーにはならない。こういった場面に不向きなのだ。それは誰もが理解してるはずだ。
ならばここはあえて、定石にとらわれない監督ならではの大胆な策を講じても良かったのではないかと思えてしまうのだ。

ただやはり結果論をこうして語るのはあまりにも不毛だと我ながら思う。
三嶋の丸への通算対戦成績も34打数11安打.323と、良いとは言えないからだ。

それでも采配が気になってしまうのは「もっとやれることがあったんじゃないか」「データを重視する割にはデータ通りにやらないよね」と、素人ながらにツッコミどころを見つけてしまうからだ。
決してアンチでも信者でもない立場で見ていると自負しているから、良い部分は良いと思うし、悪い部分は悪いと思う。しかしあくまで観客は結果論でしか語れない。
そんな話もおいおい書きたい。

今日は、シーズンを通して観戦しているファンの視点から見た「野球の流れ」としての終わりを感じた話をした。
心のなかでシーズンが終わったと思っていても、試合は最後まで見続けるし、応援もやめない。1つでも多く勝って欲しいと思っているし、優勝の可能性が本当に消える日まで優勝を願ってもいる。